リリアン・ギッシュの1人立ち 「ホワイト・シスター」

 かつての地位を失いつつあったD・W・グリフィス作品の主演女優だったリリアン・ギッシュは、イタリアを舞台にした恋愛物語で、実際にイタリアで撮影が行われた「ホワイト・シスター」(1923)を製作・出演している。

 この作品はリリアンと同じくグリフィス映画の主役としてかつて活躍した、リチャード・バーセルメスが移籍していたインスピレーション・ピクチャーズで製作された。監督にはバーセルメス主演の「乗合馬車」(1921)も担当したヘンリー・キングを起用し、難航した相手役にはロナルド・コールマンを見出して起用した。

 イギリスからアメリカへ渡り、舞台や映画に出演していたロナルド・コールマンだったが、鳴かず飛ばずの状態だった。ルース・チャタートンの舞台「ラ・テンドレス」に出演していたところを、リリアン・ギッシュに見出されて、「ホワイト・シスター」(1923)出演につながった。コールマンはこの作品で一躍注目を集めて、スターの1人となっていく。

 フランシス・マリオン・クロフォードの小説の映画化である「ホワイト・シスター」で、ギッシュはイタリア貴族の娘アンジェラを、コールマンは彼女と恋に落ちる大尉ジョヴァンニを演じた。貧しいが幸せな生活を送っていた夫婦の夫が戦死し、妻は修道院へ。だが、夫は生きており、妻に還俗するように頼むが、妻は神に仕えることを選ぶという内容である。

 撮影に際しては、アーク灯が二基あるだけと、スタジオの設備が不十分だったので、ドイツから機材を買って取り寄せて行われた。イタリアでのロケに向かう船の中で、リリアン枢機卿と知り合い、修道院の見学をさせてもらえたという。また、撮影中も映画の内容と同じように、厳かな雰囲気だったとリリアンは自伝で語っている。

 自身の出演作に悲劇的な結末が多かったからか、リリアンはハッピーエンドだった原作を変えて、悲劇的な結末にした。火山の噴火で氾濫した川に飲み込まれて、主人公の恋人の士官が死ぬという設定で、撮影のために、ナポリのヴェスヴィオ火山に登った。

 12巻で完成した映画だったが、当初配給会社が見つからなかったが、最終的にはMGMが配給することとなった。その際に12巻から9巻に縮められたという。