ドイツ映画 光と影の重視「戦く影」

 表現主義は、ドイツ映画に光と影を大事にするスタイルを生み出した。ドイツ的な暗さの幻想とサスペンスを感じさせる、アルツール・ロビソン監督の「戦く影」(1923)では、大きな黒い影が動く演技を見せた。

 貴族と妻、妻を愛する別の男とその友人に影絵芝居の興行師が狂言回し的に加わって展開する物語である。影を操ることが出来る興行師が男たちの葛藤を知り、破局を防ぐために彼らの影を消してしまう。人びとは意識を失い、夢を見る。男たちは残酷の争いの結果、貴族を殺す夢を見る。目をさました彼らは、理性を取りもどし、去っていくというものであり、フロイト精神分析を表現派風に使用したものとも言われる。

 また「戦く影」は、「プラーグの大学生」(1913)と同じように、影を分身として捉えた伝統的なドイツの神秘劇でもあり、フリッツ・アルノ・ワグナーによる撮影が影の表現や照明技術に新生面を拓いたとも言われている。


【参考記事】
映画評「戦く影」