その他のドイツ映画 1923年

 「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922)を監督したF・W・ムルナウは、ノーベル賞作家であるゲルハルト・ハウプトマン原作の「追放」(1923)を監督している。

 アメリカへと活躍の場所を移したルビッチが道を開いた歴史大作の分野では、ペーター・ポール・フェルナー監督の「ベニスの商人」(1923)などが作られている。ヴェルナー・クラウスがシャイロックを演じた。

 デンマークの映画監督で、「魔女」(1922)によって評価を高めたベンジャミン・クリステンセンは、「魔女」の興行的な失敗によって、監督ができない状態だった。「魔女」を見て、クリステンセンを高く評価していたウーファのエーリッヒ・ポマーはクリステンセンと契約し、「彼の妻は、見知らぬ女」(1923)を監督させている。ウーファ・スタイルの商業映画であり、クリステンセンの個性は感じられないという。

 他にも、山の上にある石の騎士の影が村に不吉な影を落とす伝説を脚色した、フリッツ・ヴェントハウゼン監督の「化石騎士」(1923)も作られている。

 ちなみに、ウーファの製作・管理がエーリッヒ・ポマーに委ねられたのはこの年である。ポマーは、量より質の大作路線を推進した。その結果、上映時間は長くなり、制作費はかさんだが、ドイツ映画は国際市場で大きな地位を占めるようになる。