朝鮮 初の長編劇映画「春香伝」

 日本の統治下にあった朝鮮では、舞台と映画の組み合わせでストーリーを語る連鎖劇が、1919年以降多く作られていたが、「国境」(1923)以後から映画自体でストーリーを語る作品が作られていく。

 「月下の誓い」(1923)は3巻の中編で、朝鮮総督府が貯蓄を奨励するために製作した啓蒙映画である。朝鮮最初の脚本家と言われるユン・バクナムが製作したが、一般公開はされなかったという。

 京城で映画館を経営していた日本人の早川増太郎は、「月下の誓い」を目に留め、自らが創立した映画会社の東亜文化協会の第1回作品の監督・脚本にユン・バクナムを抜擢する。そうして作られた映画が古典小説の映画化である「春香伝」(1923)である。朝鮮映画初の長篇劇映画と言われる「春香伝」は、興行的にも大成功を収めたという。