映画評「西班牙の踊り子」

製作国アメリカ 原題「THE SPANISH DANCER」
フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー製作 パラマウント・ピクチャーズ配給

監督・製作ハーバート・ブレノン 原作アドルフ・ダンヌリー、フィリップ・デュマノアール 脚本ジューン・マシス、ビューラ・マリー・ディックス 撮影ジェームズ・ウォン・ハウ

出演ポーラ・ネグリ、アントニオ・モレノウォーレス・ビアリー、アドルフ・マンジュー

 舞台は中世のスペイン。ジプシーの踊り子は、貴族のドンと知り合い恋に落ちる。一方で、王宮では王と王妃の仲を裂いて政変を起こそうと狙う宰相たちの策略が巡らされている。宰相たちは、ドンを処刑してジプシーと王を浮気させようとする。

 鳴り物入りでドイツからハリウッドへやって来たポーラ・ネグリ主演作である。主にヴァンプ役で知られるネグリだが、妖艶さに加えて快活さが魅力的な女優だった。「西班牙の踊り子」では、その両方が描かれているものの、どちらも中途半端に終わっているように感じられる。設定も、踊り子だがヴァンプではなく、恋に一途というには演出は平板だ。

 とはいえ、うさん臭い風貌がたまらないアドルフ・マンジューや、ダグラス・フェアバンクス的な快活さを見せるアントニオ・モレノといった他の出演者たちの魅力もあり、見ていて飽きないメロドラマであることは確かだ。ネグリの魅力を全面的に押し出した作品と言うよりも、出演者も内容も中の上を目指した、ホームランよりもヒットを狙った作品として考えると、文句はない。