映画評「スカーラムーシュ」

製作国アメリカ 原題「SCARAMOUCHE」 メトロ・ピクチャーズ・コーポレーション製作・配給

監督・製作レックス・イングラム 原作ラファエル・サバティーニ 脚本ウィリス・ゴールドベック 撮影ジョン・F・サイツ
出演ラモン・ノヴァロ、アリス・テリー、ルイス・ストーン、ロイド・イングレアム

 フランス革命直前。親友を貴族に殺されたモローは、道化師スカーラムーシュとなって、復讐の機会を伺う。愛する女性の貴族アリーンは親友を殺した貴族と付き合っており、心のなかは穏やかではない。革命が発生して、アリーンを助けに行くモローは、そこで衝撃の事実を聞く。

 1921年に出版されベストセラーとなったサバティーニの原作を映画化した作品である。監督で製作も兼ねていたイングラムは、「黙示録の四騎士」(1921)でルドルフ・ヴァレンティノを大スターの道を歩ませる助けをした人物。前年に「ゼンダ城の虜」(1922)では、まだ駆け出しだったラモン・ノヴァロをスターに導いた。「スカーラムーシュ」は、大ヒットした「ゼンダ城の虜」に出演したアリス・テリーやルイス・ストーンも含めて、再結集した作品である。

 フランス革命当時の街並みや宮殿などを再現させたセットを見るだけで、大金がかかった作品である事がわかる。ヒット作を連発していたイングラムが会社から信頼されており、ノヴァロというスターを大々的に売り出そうとしていたことがよく分かる。

 復讐物語でもあり、ラブ・ストーリーでもあり、史劇でもあろうとした「スカーラムーシュ」は、ラスト間際の取って付けたようなどんでん返しもあり、内容的にはそのどれもが中途半端になってしまっている印象を受けた。D・W・グリフィスによる最後の大作「嵐の孤児」(1921)が、同じようにフランス革命を背景にしながら、ひたすらリリアン・ギッシュ演じる少女の不幸を追求したのとは対称的である。だが、代わりに出演者たちの魅力を焼き付けることには成功している。

 ノヴァロはひたすらハンサムだ。大衆を前に演説するときも、愛するアリーンと接するときも、道化師となって身を隠している時も、ひたすらハンサムである。対するアリーンを演じるテリーも美しい。監督イングラムの妻だったことも関係があるのかもしれないが、とにかくキレイである。その2人に対して、ルイス・ストーン演じる貴族はひたすら悪役を演じている。このメイン3人の魅力が最大限に活かされている。それ以上を望んでも仕方が無いことだろう。

 「スカーラムーシュ」は、当時のハリウッド娯楽作の力をまざまざと見せてくれる格好の作品といえるだろう。魅力的なキャストと、それを活かす演出。金がかかっていることも随所に感じさせる。悪い意味ではなく、これが当時のハリウッド大作だ。