映画評「密偵ハラデン」
製作国アメリカ 原題「HALDANE OF THE SECRET SERVICE」
フーディーニ・ピクチャー・コーポレーション製作 フィルム・ブッキング・オフィシズ・オブ・アメリカ配給
監督・出演ハリー・フーディーニ
出演グラディス・レスリー、ウィリアム・ハンフリー、リチャード・カーライル
司法省の捜査員であるホールデンは、国際的な偽札団の存在を突き止める。
奇術師で知られるハリー・フーディーニが最後に出演した映画である。だが、何も知らない人がこの作品だけを見ても、フーディーニが歴史に名を残す奇術師であることは分からないだろう。そして、そのことを後で教えてもらったとしても、首を傾げることだろう。それくらい、この作品には個性がない。
個性がなくても、面白ければよいのだが、正直つまらなかった。非常にストレートな犯罪物+ロマンスの作品で、ストーリーには捻りがない。加えて、アクションにおける縄抜けといったフーディーニらしい要素は、敵によって巨大水車にくくりつけられる終盤のシーンくらいだろう。水車のシーンはなかなかの迫力だが、水車がぐるぐる回るだけで終わっているのは残念だ。
奇術師としてトップに上り詰め、映画界にも旋風を起こそうとしたフーディーニだったが、年齢を重ねたこともあり、この頃には野心を失っていたのかもしれない。フーディーニは、結局映画人としては忘れられた存在となってしまった。そして、それは仕方がないと思わせる映画人としての活躍であった。