映画評「唖も語る(意気天を衝く)」

製作国アメリカ 原題「LITTLE CHARCH AROUND THE CORNER」

ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ製作・配給

監督ウィリアム・A・サイター 原作マリオン・ラッセル 脚本オルガ・プリンツロウ

出演クレア・ウィンザー、ケネス・ハーラン、ホバート・ボズワース、ポーリン・スターク、ウォルター・ロング

 炭鉱町の少年デイヴィッドは、炭鉱の所有者モートンの協力もあって聖職者の道へと進む。成長したデイヴィッドはモートンの娘レイラと愛し合うが、聖職者としての義務から炭鉱町へと戻る。ある日、炭鉱が爆発し、デイヴィッドは生存者の救出に向かう。

 1918年から映画製作を開始し、現在でも名を残すワーナー・ブラザースにとって、最初のヒット作となった作品と言われる。実話を脚色した舞台を映画化した作品である。

 非常に宗教的で前向きな作品である。危険な炭鉱の救出を進んで行う英雄的な行動はまだしも、精神的な原因で話すことができない女性を治すあたりは、いくらキリストの行動となぞっているとはいえ、やり過ぎな印象も受けた。加えて、デイヴィッドは女性にももて、資本家と労働者からも信頼が厚い人物として描かれており、ヒーローを超えた超人として映画に君臨している。

 後半の炭鉱爆破から労働者や家族がモートンに詰め寄るあたりの、カオスの描写は迫力がある。堅実な演出に支えられた英雄物語である「唖も語る」は、デイヴィッドのような存在を待望する人々には、すんなり受け入れられる映画だろう。