映画評「JUS' PASSIN' THROUGH」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [製作]ハル・ローチ・ステュディオズ [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督・脚本]チャーリー・チェイス [製作]ハル・ローチ [出演]ウィル・ロジャース、マリー・モスキーニ

 感謝祭の日に汽車に乗ってある町にやって来た腹ペコのジュビロは、刑務所でも感謝祭の食事が出ることを知って、わざと捕まる。

 ウィル・ロジャースが演じる主役「ジュビロ」の名前は、かつてサミュエル・ゴールドウィンの元で映画界入りした後にヒットした作品で演じた名前らしい。当時ロジャースは、ゴールドウィンの元を去った後、映画製作の野心を燃やしたが経済的にうまく行かず、コメディ製作者のハル・ローチのスタジオでコメディに主演していた。

 当時のハル・ローチのスタジオの作品は、ナンセンスなスラップスティック・コメディが多かったが、この作品はどこか趣が異なる。全体的に余裕のあるテンポ、リアリティのあるロジャースのキャラクター(当時の短編コメディは奇抜なキャラクターが多かった)、どこかペーソスを感じさせる雰囲気など、チャールズ・チャップリンの映画に共通する(見た目以外)ものを持っている。

 独特の雰囲気はロジャースのキャラクターに合わせたためと思われるが、後にローレルとハーディのコンビ作の監督者としても活躍するチャーリー・チェイスが、うまくロジャースのキャラクターを活かしているとも言える。チャップリン作品と比べると、飛び抜けた個性はないため少し物足りない感じもしたが、それがまたロジャースのキャラクターなのだろう。