映画評「微笑むブーデ夫人」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]フランス [原題]LA SOURIANTE MADAME BEUDET [英語題]THE SMILING MADAME BEUDET

[監督]ジェルメーヌ・デュラック

[出演]ジェルメーヌ・デルモス、ジャン・ディド、マドレーヌ・ギティ

 女性監督であるジェルメーヌ・デュラックが監督し、夫を嫌悪する妻と夫の確執を描いた作品。

 二重映しやスローモーション、早回しなどといった映画の技巧を巧みに使い、妻の夫への嫌悪感を直接的に表現する一方で、夫が直したテーブルの上に置かれた花の位置をすぐに妻が直すといった間接的にも表現されている。映画の可能性を存分に引き出した作品といえるだろう。

 前衛的でありながら、しっかりとしたストーリーもきちんと語られている。ラストで、「お前がいないと生きていけない」と泣きながら妻に抱きつく夫に対して、妻が無反応で迎えるなど苦さも効いている。

 トーキー映画ならば、台詞で陳腐になってしまいそうな夫と妻の確執の物語をサイレントならではの手法を駆使して練りこまれたこの作品は、今では決してみることのできない魅力に満ちた作品となっている。

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