ハリウッドの発展を物語る3つの年
MGMが設立された1924年を、ハリウッドの発展を物語る3つの年の3つ目として、ジョルジュ・サドゥールが「世界映画全史」の中で挙げている。3つの年と理由を挙げると次のようになる。
1つ目の年は、トライアングル社が設立された1915年である。トライアングル社は、D・W・グリフィス、トマス・H・インス、マック・セネットといった直接的な製作者や監督を中心に据えた映画製作会社だった。つまり、映画界の中心は創作家たちにあった。
2つ目の年は、ユナイテッド・アーティスツ社が設立された1919年である。メアリー・ピックフォード、ダグラス・フェアバンクス、チャールズ・チャップリンといったスターたちが、自分たちが作りたい作品を作るために設立されたのがユナイテッド・アーティスツである。つまり、映画界の中心はスターにあった。
そして、3つ目の年が、MGMが設立された1924年である。MGMの中心は、ルイス・B・メイヤーやアーヴィング・サルバーグといった、自らは監督しないプロデューサーである。つまり、映画界の中心はエグゼクティヴ・プロデューサーとなったのだ。
この流れは、ハリウッドの映画産業が、作品の規模が巨大化していった状況に、いかにして対応したかを見ていく上で、非常に分かりやすい説明だと言える。
MGMの設立は、同時に監督たち中心の時代が去ったことも意味していた。MGMが誕生したとき、D・W・グリフィスはスタジオのボスの横暴ぶりを見て、映画監督仲間のレックス・イングラムにこう語ったという。「レックス、君と僕は、まるで砂上に楼閣を建てているみたいだね」
無声映画芸術の成熟―トーキーの跫音1919‐1929 (世界映画全史)
- 作者: ジョルジュサドゥール,Georges Sadoul,丸尾定,小松弘,出口丈人
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2000/08/01
- メディア: 単行本
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