「バグダッドの盗賊」 ”活劇スター”ダグラス・フェアバンクスのピーク


 ダグラス・フェアバンクスは、莫大な製作費をかけた「バグダッドの盗賊」(1924)に出演している。

 「バグダッドの盗賊」は、「ロビン・フッド」(1922)のセットを活用したという見事なセットと魔術的な特殊撮影が有名だ。アラビアンナイトものの最高作、フェアバンクスの活劇スターのピークとも言われる一方で、セットと特殊撮影の囲まれたフェアバンクスの存在が卑小化されているという意見もある。エルトン・トーマス名義でフェアバンクスが原案を出したという脚本は、「幸福はかち取られるべきもの」というモットーが全面に押し出されている。

 監督を担当したのはラオール・ウォルシュである。ウォルシュはD・W・グリフィスの助手を務めた後(グリフィス監督「国民の創生」(1915)「イントレランス」(1916)にも出演)に監督として独立していた。「バグダッドの盗賊」(1924)をヒットさせ、注目を集めている。

 この頃のフェアバンクスは、「明るくて楽天的なアメリカのヒーロー」として、アメリカを代表するスターとなっていた。明るくて楽天的な性格で、国王からカウボーイまでいろんな種類の友人がいたという。また社交嫌いのチャールズ・チャップリンとも親しく、チャップリンは社交生活をフェアバンクスにまかせ、フェアバンクス家に有名人の客が訪れるとチャップリンも招かれた。チャップリンはフェアバンクスについて「彼がもっている少年のような情熱と楽天性は、アメリカ人の好みにピッタリだった」と述べている。

 「バグダッドの盗賊」には、1人の日本人が出演している。上山草人である。上山は、1919年に渡米し、ハリウッドのエキストラとなっていた役者である。「バグダッドの盗賊」では、敵役であるモンゴルの王子役で脚光を浴びた(ちなみにモンゴル王子の召使役にもアンナ・メイ・ウォンという東洋人俳優が起用されている)。これがきっかけで上山はサイレント期の多くのハリウッド映画に出演していくことになる。

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