ジョン・バリモアと美男スターたち

 美男俳優として人気を得ていたジョン・バリモアは、「ボー・ブラムメル」(1924)に出演している。恋人が政略結婚を強いられて去ったために貴族への復讐を誓った平民ブランメルが、術策と自身の魅力を使って貴族たちの心をつかんでいくという内容で、バリモアの好演が光るという。「ニューヨーク・タイムズ」紙の1924年度トップ10映画に選ばれた。

 当時は男性ではルドルフ・ヴァレンティノを筆頭に、バリモアやジョン・ギルバート、ダグラス・フェアバンクスといったスターたちが活躍した。女優たちもグロリア・スワンソンを始め、多くのスターが誕生した。彼らの活躍について出口丈人は「映画映像史」の中で、次のように書いている。

 「この時代は、映画史上でもまれにみる美男美女の時代である。無声映画は、個々の人間固有の声、発声などを伝えることがなく、声の善し悪しやせりふ回しの巧拙を問われることがない。また、ヌードはもちろんのこと、観客がスタイルに眼を奪われるほど体の線を見せる衣装が主流になることもなかった。いきおい観客の目は容貌に注がれたから、とくに要望のきわだった者がもっとも魅力を発揮し得たのである」