その他のアメリカ映画 1924年

 後に大プロデューサーとなるダリル・F・ザナックは、この頃脚本を書いていた。1924年にワーナー専属の脚本家となり、4つのペンネームで脚本を書き、「名犬リンチンチン」シリーズなどを手がけた。

 海洋映画を多く手がけるフランク・ロイド監督は、ラファエル・サバティーニ原作の雄大な作品「シー・ホーク」(1924)を監督している。異母弟の策略で誘拐されて奴隷船に乗せられた主人公が、海賊“シー・ホーク(海の鷹)”として海原で暴れまわるという内容の作品。大きな帆船がグラスワーク(ガラスの反射を生かした技法)で何隻もスクリーンに拡大映写されるSFXが話題を呼んだという。

 1910年代から1920年代にかけて西部劇のスターとして活躍していたウィリアム・S・ハートは、この頃になると人気も落ちていた。ハートの西部劇は古臭く感じられるようになり、年齢も60歳を超えてアクションヒーローには見えなくなってきていたのだった。この年「唄ふ超人」(1924)を製作したが興行的に失敗し、配給を担当していたフェイマス・プレイヤーズ=ラスキー(パラマウント)との契約を切られている。

 チャールズ・チャップリンの元でも修行をして映画監督となったモンタ・ベルは、男性に対する女性の心のあやを鋭い感受性で描き出すのを得意とした。この年には、「痴人哀楽」(1924)を監督している。

 「幌馬車」(1923)以後、トップ監督となっていたジェームズ・クルーズは、気弱な若者が逞しさを身につけるコメディ「懦夫奮起せば」(1924)を監督している。

 古風だが、正統派のしっかりとした演出を見せたフランク・ボーゼージは、イギリス名門の娘がアメリカの開拓地で苦闘する物語を回想形式で描いた、ノーマ・タルマッジ主演作「秘密」(1924)の監督などを経て大家へと成長していく。

 スターとして活躍していたリチャード・バーセルメスは、ジョン・S・ロバートソン監督、メイ・マカヴォイ共演の「幻しの家」(1924)に出演している。古風なセンチメンタルさが快い作品だという。

 ウィル・ロジャースは、ハル・ローチのプロダクションと契約して映画に出演していた。この年は「二台の馬車、二つとも幌つき」(1924)に出演している。「幌馬車」のパロディで、ローチのプロダクションで出演した作品の中の代表作と言われている。

 エッサネイ時代にはチャップリンとも共演したコメディアンのベン・ターピンの本領はパロディ精神にあったと言われている。この年は、エーリッヒ・フォン・シュトロハイム監督「愚なる妻」(1922)のパロディである「愚なる三週間」(1924)に出演している。

 「ピーター・パン」(1924)は、ジェームズ・バリー卿の有名な小説を映画化したファンタジーである。ネバー・ランドに住む永遠の少年ピーター・パンは、3人の子供たちを連れて帰るが、3人の子供たちが帰ろうとしたときにフック船長に誘拐されてしまい・・・という内容だ。

 「無鉄砲時代」(1924)は、アール・ディア・ビッガースの「恋愛保険」を映画化した活劇コメディである。イギリスの貧乏貴族はアメリカの富豪の娘と結婚の約束をするが、破断したときのために保険会社と10万ドルの保険契約を結ぶのだが・・・という内容の作品だ。


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