ソ連 実験的な作品群 「ボリシェヴィキ国におけるウェスト氏の異常な冒険」「十月っ子の冒険」

 多くの映像についての実験を行ったことで有名なレフ・クレショフが、「ボリシェヴィキ国におけるウェスト氏の異常な冒険」(1924)を監督している。クレショフに師事していたフセヴォロド・プドフキン、セルゲイ・コマーロフ、アレクサンドラ・ホフーロワ、ウラジミル・フォーゲリ、ボリス・バルネットらが出演している。反ソ宣伝に毒されたアメリカ人の訪ソ旅行と、彼をカモにしようとする盗賊団のドタバタ喜劇という内容の作品である。ラストのデモ行進のシーンでは、ニュース映像とウェスト氏を演じる俳優を撮影したフィルムをつなげて1つの世界を構築するという、クレショフの実験を実証したものとなっている。興行的にも成功したという。

 他にも、「十月っ子の冒険」(1924)が制作されている。レニングラードで演劇によるアヴァンギャルド演劇活動を行っていたエキセントリック俳優工房(FEKS)による作品である。エキセントリック俳優工房は、グレゴリー・コージンツェフ、レオニード・トラウベルク、セルゲイ・ユトケーヴィチ、ゲオルギー・クルィジツキーが創設し、セルゲイ・ゲラーシモフ、フリードリヒ・エルムレルといった後に監督として活躍する人々も加わっていた。サーカスやジャズ、寄席芸能や映画の大衆性(アメリカ映画の冒険活劇など)に影響を受けて活動を行っていたという。「十月っ子の冒険」では、大寺院の屋根の上でフットボールをするシーンなどにアヴァンギャルドの影響が見られるという。