映画評「ボー・ブラムメル」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [原題]BEAU BRUMMEL [製作・配給]ワーナー・ブラザース

[監督]ハリー・ボーモント [原作(戯曲)]クライド・フィッチ [脚本]ドロシー・ファーナム [撮影]デヴィッド・エイベル [編集]ハワード・ブレザートン [特殊効果]F・N・マーフィ

[出演]ジョン・バリモア、メアリー・アスター、ウィラード・ルイス、カーメル・マイヤーズ、アイリーン・リッチ、アレック・B・フランシス、ウィリアム・ハンフリー

[受賞]1925年度キネマ旬報ベストテン芸術的優秀映画8位選出

 舞台は近世のイギリス。愛するマージェリーがウェールズ王に嫁ぐのを止められなかったブランメルは、復讐を企てる。ウェールズ王に近づき、王の妹を始めとする社交界の女性たちに手を出しては捨てていく。だが、マージェリーと再び愛が燃え上がりそうになったのを王に気づかれ、ブランメルはフランスに追放される。

 舞台劇の映画化である。1954年には「騎士ブランメル」のタイトルで再映画化された。ハンサムでいながら、「狂へる悪魔」(1920)でも見せたメイクを活用した変貌も得意とするジョン・バリモアが本領発揮している作品である。青年から中年、精神に異常をきたした老年までを見事に演じている。どんな年代でも強い目力がバリモアの特徴だ。

 ウィラード・ルイスは生まれながらの貴族といったウェールズ王を自然に演じているし、アレック・B・フランシスはブランメルに忠実な従僕を控え目だが堅実に演じている。特にフランシス演じる従僕の存在は、この映画のラストに潤いを与えてくれる。またラストでは二重写しを効果的に使用し、ブランメルが見るウェールズ王やマージェリーの幻影を表現している。

 「ボー・ブラムメル」は、マージェリーを愛するがゆえにひねくれた行動に出るブランメルウェールズ王(後にイギリス国王になる)と親友になるという展開と、特徴的な要素を持った作品である。役者陣がそれをしっかりと支えているし、特にラスト10数分は演出も冴え、印象深い。飛び抜けた面白さや個性はないかもしれない。だが、堅実に作られたサイレント時代の長編劇映画である。


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