映画評「ARIZONA EXPRESS」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [製作・配給]フォックス・フィルム・コーポレーション

[監督]トム・バッキンガム [原作]リンカーン・J・カーター [脚本]フレデリック・J・ジャクソン、ロバート・N・リー [撮影]ブレイク・ワグナー

[出演]ポーリン・スターク、イヴリン・ブレント、アン・コーンウォール、ハロルド・グッドウィン

 叔父を殺した罪を着せられたデイヴィッド。兄の無実を証明するために、妹のキャサリンはデイヴィッドをハメた犯罪組織を追う。証拠を掴んだキャサリンだったが、兄は逮捕されていた。翌朝の8時までに証拠を知事に届けるためにアリゾナ急行に乗るが、犯罪組織がキャサリンを追う。

 よくある話、よくある展開なのだが、アクションの演出が随所に光る。デイヴィッドと犯罪組織のボスが殴り合いをするシーンでは、雷により停電が起こり、時折光る雷光によって格闘する2人のシルエットが浮かび上がる。刑務所の脱獄のシーンでは、トロッコがぶつかって壁を壊す大規模なアクションを見せてくれる。

 アクション・シーンは、汽車や自動車に加えて馬を使ったオールスター・キャストだ。橋の上から走る汽車の天井に飛び乗ったり、汽車から車に飛び乗ったり、崖から車が落ちたりと、迫力のあるアクションを見せてくれる。

 にもかかわらず、全体的に面白いと感じないのはなぜだろう。それはひとえに、あらゆる要素がバラバラだからだ。主人公はデイヴィッドから妹のキャサリンに、時にアリゾナ急行の郵便係に移り変わる。アクションは単体だけ見ると迫力があるものの、展開に緊張感がないために、それぞれ単体の映像の魅力にとどまっている。そして、単体でみると、どれもどこかで見たことがあるシーンと思えてしまう。

 1本の映画はあらゆる映像のまとまりである。個別ではキラリと光るシーンを持つこの作品が、全体では光らないのを見ると、どのように組み立てられるかによって1本の映画としての価値が決まることを教えてくれる。