映画評「HIS NEW MAMMA」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [製作]マック・セネット・コメディーズ [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督]ロイ・デル・ルース [製作・脚本]マック・セネット [撮影]ウィリアム・ウィリアムス [編集]ウィリアム・ホーンベック

[出演]ハリー・ラングドン、アンディ・クライド、マデリン・ハーロック、タイニー・ワード、アリス・デイ

 父親の再婚相手の若い女性が、浜辺で別の男といちゃつくところをハリーが目撃する。

 この作品は、ラングドンの作品ではなく、完全にマック・セネットの作品だ。水着美人にキーストン・コップと、セネットを語るときに作品を彩る集団が登場する。加えて、自動車や馬を使ったチェイス・シーンは1910年代の前半から変わらず、ただ映像トリックを使ってよりシュールにより派手になっている。より過激なチェイス・シーンを観客が求めていたため、最初セネットはトリックを使わない派手なスタントへと向かった。だが、コストがかかったであろう派手なスタントは、この作品のようなコストが押さえられる映像トリックへと移っていったのだった。

 この頃のセネット製作の短編コメディは、見た目とは異なりどこか哀愁を感じてしまう。それは、セネットが作り続けたスラップスティック・コメディの完成形であると同時に限界であり、多くのスターが所属しながらもみんな去っていった事実を感じさせるからでもある。

 ラングドンは、セネットの作品の中で、きちんと役割をこなしている。だがやはり、ラングドンはセネットの元を去っていく。そして人気を得ていく。それもまた、セネットにかかわったスターたちの必然の道なのだ。


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