映画評「THE FIRST 100 YEARS」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [製作]マック・セネット・コメディーズ [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督]F・リチャード・ジョーンズ、ハリー・スウィート [製作]マック・セネット [撮影]ウィリアム・ウィリアムス、ジョージ・クロッカー  [編集]ウィリアム・ホーンベック

[出演]ハリー・ラングドン、アリス・デイ、フランク・J・コールマン、ルイーズ・カーヴァー、マデリン・ハーロック

 新婚のハリー夫妻は、メイドを雇うことにする。あまりにも態度の大きいメイドがやめていった後、美しいメイドがやって来るが、妻は気に入らない。夫婦と友人とメイドの4人で食後の一時を過ごしていると、停電が起きて、謎の男が家の中に侵入してくる。

 これまでに見たハリー・ラングドンの短編がマック・セネット色の強い、昔ながらのスラップスティック・コメディのスケールを大きくしたものだったのに対し、この作品は少し違う。

 葉巻を吸いながら仕事をする破天荒なメイドは、ここまでではなくても他のコメディにも登場したキャラクターに通じるものがある。だが、少し違うのが演出だ。メイドがハリー夫妻の家に入ってきた瞬間から、只者ではない雰囲気を漂わせている。カメラはそんなメイドをじっと見つめる。

 2番目に登場する妖艶なメイドが、ハリー夫妻の家に入ってきた時、今度はハリーの妻が明らかに嫉妬の表情を浮かべる。この時もカメラはメイドをじっくりと見つめる。

 私が印象に残っているのは、このじっくりとしたカメラだ。スラップスティック・コメディといえばスピードとカオスが魅力で、カメラがじっくりと人物を捉えることは多くなかった。だが、この作品にはそれがある。それは、言い換えると演出だ。

 この作品の演出は徹底されていない。後半は、これまた他のスラップスティック・コメディでも多く登場する「お化け屋敷」タイプの内容になる。かなり強引なオチは、驚きはしたものの、それ以上のものはない。だからこの作品は決してラングドンらしい作品とはいえないかもしれない。だが、演出が感じられるようになったコメディは、スラップスティック・コメディから一線を画したものといえる。この作品には、ラングドン・コメディの萌芽が感じられる。



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