映画評「STUPID, BUT BRAVE」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [製作]タキシード・コメディーズ [配給]エデュケーショナル・フィルム・エクスチェンジ

[監督]ウィリアム・グッドリッチ(ロスコー・アーバックル)

[出演]アル・セント・ジョン、ドリス・ディーン、ユージン・パレット

 理髪店で身ぎれいになり仕事を得たホームレスのアルだったが、仕事場に向かう途中で受刑者と間違われて看守に追われる身となってしまう。

 理髪店に行ったアルが、二人羽織の要領で首を不自然に回転させたりといった理髪店でのギャグ。白い服をペンキぬりたての柵に擦りつけることで囚人服になってしまうといったギャグなど、様々なギャグを丁寧に見せてくれるものの、ギャグ自体はどこか見たものである。

 内容は平凡だが、この作品に語るべき名前がある。それは、監督を務めたロスコー・アーバックルだ。無罪だったと言われる強姦殺人事件容疑でキャリアを絶たれていたアーバックルが、いとこであり、かつては共演者だったアル・セント=ジョンの作品の監督を務めているのだ。1921年の事件から3年。名前を表に出すことがまだ出来なかったアーバックルは偽名で監督を務めている。

 今よりも情報統制が簡単だった時代とはいえ、アーバックルが監督する作品の製作は、一般に知られた時のことを考えるとリスクがあったことだろう。バスター・キートンが、ハリウッドはアーバックルに同情的だったと自伝に書いていたが、この作品はその証左の1つなのだろう。作品自体は平凡だが、作品の存在は非凡だ。