映画評「KINOGLAZ」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]ソ連 [英語題]KINO-EYE

[監督・脚本]ジガ・ヴェルトフ [撮影]ハイル・カウフマン

 ソ連の人々の生活を撮影したドキュメンタリー映画。牛肉やパンが市場に並ぶまでや、精神病院やサナトリウムの様子などを捉えている。

 ニュース映画「キノ・プラウダ」を監督していたヴェルトフが、時事ニュースを追うだけではなく、社会の深層や裏側まで目を向けた作品を作ろうという意欲が伝わってくる。単に意欲だけではなく、牛肉やパンが市場に並ぶまでの様子は逆回しを使用して視覚的なスペクタクルも忘れていない。さらには、精神病院の様子や急病人を助けに向かう救急隊員の描いたシーンでは、実際の患者や病人かは分からないが、精神病患者や死体を臆せず映し出している。

 急病人のシーンでは、救急車を電話で呼ぶ妻と電話を受ける救急隊が両方映し出されるなど、演出を感じる部分もある。だが、それよりもヴェルトフがカメラを社会にどのように活かしていくべきかという信念を感じることができるのが、この作品の最大の特徴であり、魅力といえるだろう。