エルンスト・ルビッチとドイツ映画人のハリウッドでの活躍

 ドイツからハリウッドへ渡り、小津安二郎も真似たという「ルビッチ・タッチ」と呼ばれた洗練されたタッチの作品を監督したエルンスト・ルビッチは、オスカー・ワイルドの戯曲が原作の「ウィンダミア夫人の扇」(1925)や「当世女大学」(1925)で手腕を見せつけている。

 「ウィンダミア夫人の扇」は、ロナルド・コールマンメイ・マカヴォイが共演した作品で、字幕を多用せずに上流階級の男女の微妙な心の綾を描写している。人妻にしきりにモーションをかけるプレイボーイのダーリング卿を、伊達男が似合うコールマンが好演した。

 「当世女大学」は、新しい恋人が出来て夫と離婚しようとした妻が土壇場で夫と仲直りをするという物語である。マリー・プレヴォーとモント・ブルーが夫婦役で共演し、夫の秘書役に後に「イット・ガール」として有名になるクララ・ボウが出演した。

 この頃、ハリウッドはドイツ映画界から多くの人材を引き抜いていた。F・W・ムルナウエルンスト・ルビッチ、ポール・レニといった監督やカール・ストロースらのカメラマン、エミール・ヤニングス、コンラート・ファイトといったスターに加えて、セットデザイナーなどのスタッフにまで及んだ。この流れは1930年代も続き、ハリウッドの発展に寄与した。

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