ドイツ 「喜びなき街」 G・W・パプストとガルボ

 G・W・パプストは、ヒューゴー・ベタウァーの小説をオールスターキャストで映画化した「喜びなき街」(1925)を監督している。第一次大戦後のインフレに見舞われたウィーン。貧しいグレーテは生活のために高級売春婦にされそうになり・・・という内容の作品だ。

 戦後のウィーンの社会状況をそのままに、即物的に、冷酷に描き出した作品と言われる。リアルな描写、破滅的なインフレの再現は、第一次大戦後のドイツ映画においては初めて登場したものであるという。

 一方でパプストのリアリズムは、「描写はリアルだが、素材の処理は必ずしもリアルではない」(岡田晋、「ドイツ映画史」)とも言われる。メロドラマ的、エキセントリック的であり、しばしば現実は異常化される。「喜びなき街」でも、最後のハッピー・エンドはメロドラマ的で蛇足だとも言われている。

 ちなみに「喜びなき街」は、G・W・パプストの名前を第一線に押し上げただけではなく、無名だったグレタ・ガルボを世に送り出した作品としても知られる。