映画評「アンニー可愛や」
※ネタバレが含まれている場合があります
[製作国]アメリカ [原題]LITTLE ANNIE ROONEY [製作]メアリー・ピックフォード・カンパニー [配給]ユナイテッド・アーティスツ
[監督]ウィリアム・ボーダイン [製作]メアリー・ピックフォード [原作]キャサリン・ヘネシー [脚本]ルイス・D・ライトン、ホープ・ローリング [撮影]ハル・モーア、チャールズ・ロッシャー [美術]ジョン・デュカス・シュルツ、ポール・ヤングブラッド
[出演]メアリー・ピックフォード、ウィリアム・ヘインズ、ウォルター・ジェームズ、ゴードン・ウィリス
ヤンチャなアニーは、近所の男の子とケンカばかりしているが、警察官の父親と兄と共に幸せに生きる少女だった。だがある日、アニーの父がダンス場での騒動に巻き込まれて射殺されてしまう。アニーも慕うジョーが犯人だと吹きこまれたアニーの兄はジョーを撃つが、本当の犯人は別にいることが分かる。
年齢的な問題(公開当時33歳になっていた)から少女役に限界を感じていたピックフォードだが、大人の役を演じた「ロジタ」(1923)と「ドロシー・ヴァーノン」(1924)は興行的に失敗していた。アンケートを取ると、ピックフォードに望まれる役は、「シンデレラ」や「ハイジ」といった少女役ばかり。そして、大衆の意見に沿って少女役に戻ったのが、「アンニー可愛や」である。
そうした背景を知って見ると、「アンニー可愛や」のピックフォードはどこか悲痛だ。自身のプロダクションで製作され、大スターだったピックフォードの作品らしく、ニューヨークのダウンタウンで繰り広げられる、子どもたちのレンガを投げ合うケンカは金がかかっていることが伝わってくる。イキイキとしたアニーを演じているシーンではピックフォードの年齢はあまり気にならない。
気になるのは、父親が射殺された後のしっとりとしたシーンである。悲しみにくれたり、ジョーの命を助けるために躍起になるアニーの姿には、とても12歳には見えない大人の雰囲気がにじみ出ている。これは、見た目の問題ではなく、人生の経験を積んだ人間から滲み出てしまうものなのだと思う。ピックフォードが悲しさや必死さを表現しようとすればするほど、そこには実年齢に近い何かがにじみ出てくる。
ピックフォードは翌年の「雀」(1926)を最後に少女役から引退する。30歳から35歳にかけて、ピックフォードは大人役に挑戦するも受け入れられず、少女役に回帰するが2作でやめる。ピックフォードの作品には、10代後半から20代にかけての役柄を演じて成功している作品が多くある。少女ではなく、若い女性を演じることができた年代に、ピックフォードの真価が発揮された作品が作られなかったことは残念だ。