映画評「曲馬団のサリー」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]SALLY OF THE SAWDUST  [製作]パラマウント・ピクチャーズ

[監督]D・W・グリフィス  [原作]ドロシー・ドネリー  [脚本]フォレスト・ハルセイ  [編集]ジェームズ・スミス  [美術]チャールズ・M・カーク

[出演]キャロル・デンプスター、W・C・フィールズ、アルフレッド・ラント、アーヴィル・アルダーソン

 サーカスの芸人マクガーグルは、両親が亡くなったサリーの育ての親。祖父母に会わせようと、大きくなったサリーを連れていくが、サリーが孫であることを告げる前に、芸人であることを理由にサリーの祖父から白眼視される。

 リリアン・ギッシュとの、サイレント映画期における最強のコンビを解消したD・W・グリフィスが、次にヒロインとして起用したのがデンプスターだった。デンプスターには、ギッシュのような聖母のような雰囲気はないものの、可愛らしさが魅力的である。グリフィスは、ギッシュの時と同じように、クロース・アップを駆使して、デンプスターの可愛らしさや健気さを捉えている。だが、演技の度合い(大げささ)は同じくらいにも関わらず、デンプスターだとやりすぎに見えてしまう。

 「曲馬団のサリー」のもう1人の主役がW・C・フィールズだ。フィールズはトーキーになってから本領を発揮し、人気を得ていくコメディアンだが、サイレント期から映画に出演していた。「曲馬団のサリー」は、グリフィスにしては珍しく、コメディとしても成功していると言える作品だが、それはひとえにフィールズの芸達者ぶりに尽きる。ジャグリングを見せたり、ギャンブルを「旧軍隊のゲーム」と居直ったりと、見せ場をかっさらっている。

 後半では、グリフィスの代名詞の1つであるカット・バックの技法を駆使して、人情話を盛り上げてくれる。「曲馬団のサリー」は、あらゆる点でグリフィスの作品であることは間違いないのだが、フィールズに助けられている点や、デンプスターの限界を感じる点を考えると、グリフィス1人の存在では成立しなくなっている悲しさも感じられる作品だ。