映画評「昨日への道」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]THE ROAD TO YESTERDAY  [製作]デミル・ピクチャーズ・コーポレーション  [配給]プロデューサーズ・ディストリビューティング・コーポレーション(PDC)

[監督・製作]セシル・B・デミル  [原作]ビューラー・マリー・ディックス、エヴェリン・グリーンリーフ、サザーランド  [脚本]ジャニー・マクファーソン  [撮影]J・ペヴァレル・マーレイ  [編集]アン・ボーチェンズ  [美術]アントン・グロット、アントン・グロット、ポール・アイリブ、ミッチェル・ライゼン、マックス・パーカー  [衣装]ミッチェル・ライゼン、クレア・ウエス

[出演]ジョセフ・シルドクラウト、ジェッタ・グーダル、ヴェラ・レイノルズ、カーソン・ファーガソン、ウィリアム・ボイド

 ケンとマレーナは新婚旅行でグランド・キャニオンに来ている。だが、医者にも原因が分からない痛みを左腕に抱えるケンと、本人も原因が分からないケンへの恐怖心を抱いているマレーナの仲はうまくいっていない。一方、今どきの娘であるベスは、退屈な男性との婚約に不満を持っている。そんな彼らは、牧師のジャックと出会う。

 監督・製作を務めるデミルは、当時自由な映画製作を目指して自身のプロダクションを設立していた。そんな状況で製作された「昨日への道」は、キリスト教と生まれ変わりという、デミルの好きな要素が詰め込まれた作品となっている。というか、それだけの作品となっている。現在のいろんなうまくいっていないことは、過去の自分たちに原因があるかもしれないと言われても、正直「そうですか」という感想しか持てなかった。

 300年前のイギリスのセットや衣装、魔女の火あぶりにするシーンでの群衆には、デミルの演出力を感じる。現在のシーンでの列車衝突シーンでは、衝突した相手の列車の先頭部分が画面奥から手前に迫ってくるという迫力あふれるショットを見せてくれたりもする。

 「昨日への道」はデミルらしい確かな演出力と、デミル好みの要素が煮詰められた作品だ。煮詰められすぎて、デミル以外の人が見ても楽しめないし、理解すらできない人もいるのではないかと思わせる。だが、デミルという映画監督を考える上では、避けて通れない作品だろう。