映画評「仇敵めがけて」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [原題]CLASH OF THE WOLVES [製作・配給]ワーナー・ブラザース

[監督]ノエル・M・スミス [脚本]チャールズ・ローグ [撮影]エドウィン・B・デュパー、アレン・Q・トンプソン、ジョセフ・ウォーカー [編集]クラレンス・コルスター [美術]ルイス・ゲイブ、エスドラス・ハートレイ

[出演]リン・チン・チン、ナネット、チャールズ・ファレル、ジューン・マーロウ、ヘイニー・コンクリン

[賞]2004年度アメリカ国立フィルム登録簿登録作品

 オオカミと犬の子であるロボは、サボテンのトゲが刺さって動けなくなったところを、デイヴに助けられる。デイヴは牧場主の娘メアリーと恋をしている。自分の所有している土地をホートンに奪われそうになり、襲われて動けなくなったデイヴだったが、メアリーへの助けをロボに頼む。

 出演しているリン・チン・チンとナネットは犬である。1922年にデビューしたリン・チン・チンの作品は人気を呼び、高給を取る大スターとなっていた。「仇敵めがけて」はリン・チン・チンが人気絶頂だった頃の作品である。動物を扱った作品は、大ヒットとなったイギリス映画「ローヴァーに救われて」(1905)から現在に至るまで、多くの作品がコンスタントに作られているが、リン・チン・チンより有名になった犬はいない。

 サボテンのトゲが刺さらないようにと作ってくれた靴を履く姿や、人目を避けて愛し合うデイヴとメアリーのために人がやってくると尻尾を振って合図する姿の可愛らしさ。悪漢ホートンを襲うシーンでの力強さ。様々な要素がリン・チン・チンに込められている。これから後に作られた犬が登場する多くの作品でも踏襲されるものだが、リン・チン・チンが登場するまではなかった要素だったのだろう。

 ロマンス、悪漢、コメディリリーフ、アクションなど、ベタだが娯楽作として不可欠な要素がきちんと盛り込まれており、あの名優リン・チン・チンの魅力も見ることができる貴重な作品である。