映画評「滅び行く民族」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]THE VANISHING AMERICAN  [製作]フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー  [配給]パラマウント・ピクチャーズ

[監督]ジョージ・B・サイツ  [原作]ゼイン・グレイ  [脚本]エセル・ドハティ、ルシアン・ハバート  [撮影]ハリー・ペリー、チャールズ・エドガー・ショーンバウム

[出演]リチャード・ディックス、ロイス・ウィルソン、ノア・ビアリー、マルコム・マグレガー、ノッキ

 第一次世界大戦前後。アメリカ西部のネイティブ・アメリカン居留地が舞台。勇敢なネイティブ・アメリカンのノファイエは、白人の女教師マリオンの影響を受け、キリスト教的な価値観を身につけていく。一方で、ノファイエを疎ましく思う居留地の責任者ブッカーは、ノファイエを追いだそうと画策する。

 この後多く作られる西部劇では問答無用と悪役として使われることになるネイティブ・アメリカンを主人公に、公開当時における現在(正確に書くと製作当時から数年前までの過去)の出来事を描いた意欲的な作品である。

 主人公のネイティブ・アメリカンノファイエを演じるのが白人のディックスだったり、ノファイエをキリスト教的価値観とアメリカ人としての自覚に目覚める存在としたりと、白人側と同じ考え方を持ったネイティブ・アメリカンは良いネイティブ・アメリカンという意識が散見される。ネイティブ・アメリカンへの迫害は、ビアリー演じる1人の白人の責任とされ、歴史的な重みから逃げているともいえる。

 といった不十分な点を挙げるのは簡単だが、ネイティブ・アメリカンを主人公に据えたドラマとして製作された作品として、歴史的な価値は非常に大きい作品である。主軸は、ノファイエを中心としたネイティブ・アメリカンたちの苦しみを描いた作品であることは間違いない。