映画評「A WOMAN OF THE WORLD」
※ネタバレが含まれている場合があります
[製作国]アメリカ [製作・配給]パラマウント・ピクチャーズ
[監督]マルコム・セント・クレア [脚本]ピエール・カミングス [原作]カール・ヴァン・ヴェクテン [撮影]バート・グレノン
[出演]ポーラ・ネグリ、チャールズ・エメット・マック、ホームズ・ハーバート、ブランシュ・メハファー
リビエラで「世界の女」と崇められたエルノラは、失恋してアメリカ中部に住むいとこ夫婦の元にやって来る。清教徒色の強い町では、エルノラの刺青は注目の的だった。そんなエルノラを当初苦々しく思っていた地方検事だったが、徐々にエルノラの魅力に取り憑かれてしまう。
ドイツからハリウッドにやって来た女優であるポーラ・ネグリを、ヨーロッパからアメリカにやって来た貴族にして見せるという、ネグリのイメージを効果的に使ったキャスティングだ。ルイーズ・ブルックスを思わせるペタったして揃った髪型はネグリには似合っていないように感じるが、眠そうに見えながらも奥底が常に光っている眼には、ネグリがスターになった理由が宿っている。
エルノラと地方検事のやり取りが少ないこともあり、2人の間に恋の情熱が燃え上がるというのが今ひとつ伝わって来なかったのが残念だ。
かつてはキーストン・コップの一員としても活躍したベテランのコメディアンであるチェスター・コンクリンが、街の人々に刺青を白目で見られるエレノアに対して、「刺青はアートだ!!」と叫び、自分の腕に描かれた列車の刺青を見せるシーンが最も印象に残った。右腕と左腕しか披露されないが、どうやら胸にも描かれていてつながっているらしい。そんなコンクリンを見て爆笑するネグリ演じるエレノアの楽しそうなこと。だが、この脇道とも言えるシーンが最も印象に残っているというのが、作品全体のイメージの弱さを物語っている。