映画評「THE MONSTER」

[製作国]アメリカ  [製作・配給]メトロ=ゴールドウィン・ピクチャーズ

[監督・脚本]ローランド・ウェスト  [原作]クレイン・ウィルバー  [脚本]ウィラード・マック、アルバート・ケニヨン  [撮影]ハル・モーア  [編集]A・カール・パーム  [美術]W・L・ヘイウッド

[出演]ロン・チェイニー、ガートルード・オルムステッド、ハラム・クーリー、ジョニー・アーサー

 男性の行方不明事件が発生。通信教育で探偵の資格を得たジョニーは、ある精神病院に迷い込み、同じように迷い込んだジョニーが愛するベティと恋敵と共に閉じ込められる。院長を名乗るジスカは、実はマッド・サイエンティストで、ベティを実験材料に使おうとする。

 1922年にニューヨークで上演された舞台の映画化である。精神病院の中を舞台に、間が抜けているが、自分でも気づかないうちに危機を回避するジョニーを中心に、ホラーとコメディの雰囲気を持った異色の作品だ。伝説の俳優ロン・チェイニーがジスカを演じており、マッド・サイエンティストを怪しさたっぷりに演じている。

 ホラーの雰囲気を醸し出そうという演出がやり過ぎでコメディとなっている。寝ているベティを連れ去るために、わざわざベッドの下から手が伸びて体を捕まえてからベッドが地下に下がっていくなど、随所にやり過ぎ感が見られる。チェイニーの演技も過剰で、気絶して横たわっている女性の横に立ち、ニヤニヤしながら手を延ばすという、この後も延々と受け継がれていく、マッド・サイエンティストのステレオタイプの原型を見せてくれる。

 ホラーとして考えるとやり過ぎだが、コメディとして考えると適切なのかもしれない。後半は、ジョニーが電線を綱渡りの要領で渡ったり、窓に飛び込んだジョニーがそのまま階段の手すりを滑り降りたりと、スラップスティック・コメディさながらのアクションも見せてくれる。

 残念なのは、ホラーとしてはやり過ぎて、コメディとしては中途半端なところだろう。ジョニーを演じるジョニー・アーサーはコミカルな演技を見せてくれるものの、ジョニー自身が面白いかと聞かれると、「まあまあ」というのが正直なところだ。