映画評「THE RED KIMONA」

[製作国]アメリカ  [製作] BLANC DE CHINE FILMS,ミセス・ウォーレス・リード・プロダクションズ  [配給]ヴァイタル・エクスチェンジス

[監督]ウォルター・ラング  [監督・製作・脚本]ドロシー・ダヴェンポート  [脚本]アデラ・ロジャース・セント・ジョンズ、ドロシー・アーズナー  [撮影]ジェームズ・ダイアモンド

[出演]プリシラ・ボナー、ネリー・ブライ・ベイカー、カール・ミラー、メアリー・カー、ヴァージニア・ペアソン

 ガブリエルは自分を利用して捨てた男を射殺するが、裁判で無罪となる。その後、彼女の知名度を利用しようとした女性の元に囲われた後、贖罪のために看護婦になろうとするが、暗い過去が邪魔をする。

 製作を担当し、作品の中でもストーリーテラー役として登場するドロシー・ダヴェンポートは、1923年に麻薬中毒で亡くなったウォーレス・リードの元妻である。リードの死後、麻薬中毒を扱った作品の製作など、映画製作に携わっていた。この作品も、「不幸な過去を背負っても頑張る女性」を描いている。だが、この作品は副産物を生んだことでも知られている。

 副産物とは、主人公のガブリエルが実在の人物で、実際の事件を扱ったことによって生まれた。実際のガブリエルも幸せな生活を営んでいたのだが、過去を隠していた。だが、この作品の公開によって過去を知られ、生活が一変してしまったのだ。ガブリエルは提訴し、カリフォルニア州での裁判の結果、プライバシーの侵害が認定されたのだった。

 プライバシーの侵害についての線引が今よりも曖昧な時代だったのだ。映画の内容はガブリエルを蔑むものではなく、むしろ応援しているのだが、ガブリエルの同意を得ないで製作されたことが問題を呼んだのだった。

 副産物に目が行きがちだが、赤い服などを着色して表現したりといった技法上の工夫や、ごく普通の女性としてガブリエルを演じるプリシラ・ボナーの好演など、作品としても評価すべき部分がいろいろある作品であることも記録しておきたい。