映画評「THE RAT'S KNUCKLES」

[製作国]アメリカ  [製作]ハル・ローチ・ステゥディオズ  [配給]パテ・エクスチェンジ
[監督]レオ・マッケリー  [製作]ハル・ローチ

[出演]チャーリー・チェイス、マーサ・スリーパー、サミー・ブルックス、ジャック・ギャヴィン

 新しいネズミ捕り機を開発したジミーは、恋人と金持ちになる妄想をする。だが、実際には誰も興味を持ってくれず、恋人も離れてしまう。自殺をしようとしたジミーを見た金持ちが、ネズミ捕り機を見てくれることになったが・・・。チャーリー・チェイスがジミー・ジャンプの役名で主演したコメディ・シリーズの1つ。

 この作品のとぼけた雰囲気は他にはない楽しさを持っている。スラップスティックは最小限に抑えられ、その代わりにあるのは、細かい地味なギャグの数々だ。金持ちとなった妄想の中では、巨大なネズミの彫像が飾られ、恋人の頬にはネズミの刺青がある。ジミーに殺意を覚えた男は、ジミーの名刺に「汝、殺すなかれ」と書かれているのを見て思いとどまる。

 その後、ジミーを助けてくれるかと思われた金持ちと現れるものの、ネズミ捕り機のあまりのひどさに杖でゆっくりとジミーを押して海の中に突き落としてしまう。ネズミ捕り機のひどさも見事なのだが、「杖でゆっくりと」押すという演出が見事。乱暴に押しやるのではなく、静かにゆっくりとジミーは突き落とされる。この間、タイミングが素晴らしい。

 当時の他のコメディには見られない地味だが、間とタイミングに支えられた作品で、コメディの新機軸に向かっている。後に大監督なるマッケリーは、公開当時は26歳。こうした作品で、映画における間やタイミングを磨いていったのだろう。