映画評「ISN'T LIFE TERRIBLE」

[製作国]アメリカ  [製作]ハル・ローチ・ステゥディオズ  [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督]レオ・マッケリー  [製作]ハル・ローチ  [撮影]フレッド・ジャックマン、レン・パワーズ

[出演]チャーリー・チェイス、キャスリン・グラント、オリヴァー・ハーディ、ロン・ポフ、サミー・ブルックス

 妻と娘と義理の兄を抱えるチャーリーだが、仕事がなかなかうまくいかない。そんな中、万年筆でトップセールスを記録したものに船旅がプレゼントされる事を知ったチャーリーは応募、何とか船旅を勝ち取る。いざ船旅に向かったチャーリーと家族たちだったが、娘がはぐれてしまったり、船がオンボロだったりと散々な目に遭う。

 スタン・ローレルとコンビを結成する前のオリヴァー・ハーディが義理の兄役で出演していたり、「キング・コング」(1933)に出演する前の10代のフェイ・レイがチャーリーに万年筆を売り込まれる女性役で出演していたりといった話題もある作品。

 船旅に出てからが面白い。オンボロの船で、部屋に行くといきなり浸水している。不安になったチャーリーが救命ボートに試しに乗ってみると底が抜ける。そんな中、鐘の音が聞こえ、乗客たちが大勢走っているのを見たチャーリーは、船が沈むと思い救命ジャケットをつけるが、食事の鐘だったというギャグ。しかも、乗客のいのちを守るための救命ジャケットを海に投げると、沈んでしまうのだ!一連のギャグの流れもいいし、最後のオチもビシっと決まっている。

 沈むといえば、船に乗る前に、チャーリーたちの重い荷物をクレーンで船に積んでもらおうとするが、海に落ちてしまうギャグでも、あっけにとられるチャーリーたちと、沈んでいく荷物とブクブクと浮かぶ水泡のショットの絶妙な間で楽しませてくれる。

 サイレント時代のコメディが、スラップスティック一辺倒から、シチュエーションやタイミングでも笑わせる時代の狭間で間違いなくチャーリー・チェイスは最前線に立っていたことをこの作品は教えてくれる。そして、この時代のチェイス作品の監督であるレオ・マッケリーの存在も忘れてはならない。