映画評「DR.PYCKLE & MR.PRIDE」

[製作国]アメリカ  [製作]ジョー・ロック・コメディーズ、スタンダード・フォトプレイ・カンパニー  [配給]セルズニック・ディストリビューティング・コーポレーション

[監督・製作]ジョー・ロック  [監督]スコット・ペンブローク  [撮影]エドガー・ライオンス

[出演]スタン・ローレル、ジュリー・レナード、シド・クロスリー、ドット・ファーレイ

 化学者のピクル氏は、善と悪を分離する薬を発明。自らがその薬を飲むと、悪の権化であるプライドに変貌するのだった。ロバート・ルイス・スティーヴンソンの「ジキル博士とハイド氏」を原作とした、ジョン・バリモア主演「狂へる悪魔」(1920)のパロディである。同じ原作を元にした作品にフレデリック・マーチ主演の「ジキル博士とハイド氏」(1931)もあるが、セットやプライドの造形などを見ると「狂へる悪魔」のパロディというのが正しいらしい。

 悪の権化となったプライドの悪が小さいのが面白い。プライドがやることを列記すると次のようになる。「子どものアイスクリームを取り上げる」「吹き戻し(ピロピロ笛)で女性を驚かす」「膨らませた紙袋を手で破裂させて女性を驚かす」「男性をそそのかし、Chinese finger trap(小さな筒の両側に人差し指を入れると抜けなくなるオモチャ)に指を入れさせて困らせる」。こうした小さないたずらを嬉々として演じるローレル演じるプライドの姿だけで、この作品は十分楽しい。

 オリヴァー・ハーディとコンビを組む前のスタン・ローレル単独主演作には退屈な作品が多いのだが、この作品は「どんなにかき集めても、いたずらくらいしかやることがないくらい悪の要素が少ないハイド氏」というアイデアが卓抜していて、文句なしに面白い。