ヴァレンティノに対する評価

 ルドルフ・ヴァレンティノは、死によってその伝説を完結させた。1920年代のハリウッドは、いつの時代にも増してスター・システムが絶頂にあった時代と言われるが、ヴァレンティノはまさにその象徴だったのだ。また、1920年代は、ハリウッドが映画を産業として確立させた時期とも言える。ヴァレンティノはその時代の商品としてのスターの象徴的存在でもある。

 ジョルジュ・サドゥールは「世界映画全史」の中でヴァレンティノを評して、次のように書いている。

 「本当を言うと、彼は、その個性がまさしく映画史に残る本当の才能を持った俳優であるよりも、その宣伝担当者たちによって神話の域にまで高められた一人の人物にすぎなかった。彼は映画芸術よりも映画産業に属し、その典型的な産物となった」

 サドゥールのように、ヴァレンティノが役者としての実力がなかったという意見もある。この意見の妥当性は別としても、そういう意見が出るほど、ヴァレンティノが俳優である以上にスターであったことを示している。

無声映画芸術の成熟―トーキーの跫音1919‐1929 (世界映画全史)

無声映画芸術の成熟―トーキーの跫音1919‐1929 (世界映画全史)