「肉体と悪魔」 ガルボの人気が決定的に

肉体と悪魔《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

 グレタ・ガルボが「明眸罪あり」に続いて出演したクラレンス・ブラウン監督の「肉体と悪魔」(1926)は、ジョン・ギルバートとガルボの初共演作である。幼なじみの2人の男と魅惑的な女性の三角関係が、男女が共に横たわるという当時としては大胆なラブ・シーンを織り交ぜて描かれている。服を着た人物同士の身体の接触によって性的欲望を表現し、ガルボのエロティシズムに溢れた作品となり、人気を決定的にした。

 ガルボが演じる女性は、聖体拝受の杯を回して恋人の唇が触れた場所から飲んで見せた。ジョン・ギルバートの頭がガルボの腕に抱えられながらひざにもたれるシーンは、ガルボに隷属しているように演出された。ガルボ疲労の浮かんだ表情は、恋の病に冒されているように見えた。さらに、眉根に寄る二本の小さい憂いの皺は自責の念の現れのようにも見えた。ギルバートとの出会いのシーンでは、様々な感情をワン・ショットで表現して見せた。

 以後もガルボの作品を担当していくことになる、照明・撮影のウィリアム・ダニエルズと出会ったことも大きな助けとなったという。「肉体と悪魔」ではジョン・ギルバートのタバコの先に小さな電球をつけるといった工夫がされている。

 ちなみに、「明眸罪あり」(1926)でもアメリカ版では道徳的な結末(ヨーロッパ版では街娼になるラスト)としたMGMは、「肉体と悪魔」のラストも道徳的なものに変更した。

 魅力が爆発した「肉体と悪魔」により、ガルボは人気を決定的にし、「悲劇の女神」としての役割も決定的となったのだった。

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