ドイツ 「真実主義」「新即物主義」の台頭

 この頃のドイツ映画の特徴として、「カリガリ博士」(1919)から始まった表現主義の衰退と、「真実主義」「新即物主義」の台頭が挙げられる。真実主義は、ダダイスムが源泉であり、現実暴露、社会風刺、反体制的攻撃精神が核であった。対して、新即物主義は主観を排して、現実を即物的に表現しようとしたものだった。

 岡田晋は「ドイツ映画史」の中で、「真実主義」「新即物主義」について次のように書いている。

 「真実主義は、表現主義の内面性、観念性に対して、あくまで具象性を追及し、また主観や美的省察を排除し、現実にひそむナマの真実をつかみ出そうとする」

 「新即物主義は、真実主義ほど急進的ではない。ものをそのものとして眺め、現実を現実として受け入れる」

 「この2つの流れは、表現主義に対する反動として、ドイツの文化風土を継承しながら、リアリズムを指向していたのである」