映画評「猫のなる木」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]NOW YOU TELL ONE  [製作]バワーズ・コメディ・コーポレーション  [配給]ロバートソン=コール・ディストリビューティング・コーポレーション

[監督・製作・脚本]出演チャールズ・バワーズ [監督・脚本]ハロルド・L・ミュラー [脚本]テッド・シアーズ

[出演]チャールズ・バワーズ

 嘘つき大会に連れてこられたバワーズは、何でも接木して、何でも実らせることができるという話を始める。

 チャールズ・バワーズは今では忘れられた存在だが、「つむじ風コメディ(Whirlwind Comedies)」シリーズとして、短編コメディを1926年から製作していた人物だ。

 ストップモーション・アニメを効果的に使用した作品。ストップモーション・アニメ自体は、昆虫を登場させたロシアのスタレーヴィチによる作品など1910年代前半から作られているが、「猫のなる木」は現実の世界にストップモーションを持ち込むことで、新たな地平に立っていると言えるだろう。

 ファンタジーの要素も含まれているものの、楽しいファンタジーではない。どちらかと言えば、キッチュでグロテスクだ。接木して様々な実がなるようになった木は、この世のあらゆる実をつけるが、明らかにこの世のあらゆるものとは異なる。後半のネコが次から次へと木から生まれてくる描写は、ストップモーション・アニメの出来栄えが見事であるためになおさら不気味さを感じた。

 「猫のなる木」は、ストップモーション・アニメの新しい使い方という側面といい、不気味な雰囲気といい、ちょっと簡単にスルーできない作品である。一見の価値あり。