映画評「クライド・クックの流浪のパパ」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]WANDERING PAPAS  [製作]ハル・ローチ・ステュディオズ  [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督・脚本]スタン・ローレル  [製作総指揮]ハル・ローチ  [脚本]エドワード・ディロン、カール・ハーボー、ジョージ・オニール、ジェームズ・パロット、ハル・イェーツ  [編集]リチャード・C・キュリアー

[出演]クライド・クック、オリヴァー・ハーディ

 橋の工事現場で働く男たちの食事を作るシェフは、男たちから「豆はもう嫌だ」と言われ、魚やウサギを捕まえに行く。

 「流浪のパパ」は、今では忘れ去られたコメディアンであるクライド・クックが主演の作品だ。だが、スタッフとキャストを見ると、この後名コンビとして活躍して行くローレルとハーディが、それぞれ監督と出演に名を連ねている方が気になる。

 製作のハル・ローチは当時、ハロルド・ロイドに退社されたことから新しいコメディ・スターの開拓を考えており、クックも候補の1人だったのだという。結局は、ローレルとハーディのコンビが大当たりすることになるわけだから、世の中組み合わせやタイミングといったものが重要であることを思い知らされる。

 パンケーキに火薬が混じってしまい、食べようとすると爆発するというギャグも面白いが、最も目を引くのは、崖から落ちそうになった列車で繰り広げられるドタバタだろう。モロにチャールズ・チャップリンの「黄金狂時代」(1925)をパクったギャグだが、「黄金狂時代」の方がスリルもあるし、ギャグとしても面白い。チャップリンの腕が素晴らしいことを思い起こさせる。

 ハーディは、ローレルとコンビを組んでからの特徴であるヒゲを生やしていない。優しそうな笑顔をクックに向けて、自分のパンケーキの数を増やさせる演技は絶品だ。