映画評「ビリー・ビーヴァンの空中サーカス」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]CIRCUS TODAY  [製作]マック・セネット・コメディーズ  [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督]ロイド・ベーコン、デル・ロード  [製作]マック・セネット  [撮影]ハップ・デピュー  [編集]ウィリアム・ホーンベック

[出演]ビリー・ビーヴァン、アンディ・クライド、マデリン・ハーロック、キューピー・モーガンロジャー・ムーア

 ガスとスリムの兄弟はサーカスで働いている。逃げ出したライオンに追いかけられた2人が小屋に逃げ込むと、その中にまでライオンが入ってきてしまう。

 序盤は、サーカスの様々な出し物を使ったドタバタが繰り広げられる。シーソーに乗った象を空中に飛ばしてみせるギャグでは、アニメーションが使われるなど映像的な工夫が凝らされている。

 対して、後半のライオンのシーンでは、ライオンと役者たちがかなり近い距離で共演している。小さな小屋の中で、タイミングよく移動することで、ガスとスリムに気づかれないといった名演技を見せてくれる。このあとは、気球に引っ張られて小屋が空中を舞うギャグが、特殊撮影で表現される。ここでは、のちのアクション映画を見るような演出がされており、アクション映画の始祖がスラップスティック・コメディにあることを教えてくれる。

 サイレントの時代も後半を迎えたこの頃になると、単純なスラップスティックに加えて、映像的な工夫もされ、さらには大掛かりなセット(この作品では小屋は落下して粉々に砕かれる)が使われたりと、様々な技法が集約されたコメディを見ることができる。「空中サーカス」もその1つで、見ていて非常に楽しい作品だ。だが一方で、テクニックに頼っている分、キャラクターの魅力が伝わってこないのだが、それは無い物ねだりというものだろう。