その他のフランス映画 1927年

 後のフランスの巨匠ルネ・クレールは、ドラマティックな冒険劇「風の餌食」(1927)を監督している。

 技術面では、フランスのソルボンヌ大学教授アンリ=ジャック・クレティアンがアナモフィック(歪曲)レンズを用い、横長の風景を圧縮して撮影し、映写時に再び横長にする方法を発表している。これは、後にシネマ・スコープに応用されることになる。

 独立プロデューサーとなったジャン・エプスタンは、時間が逆の順序で描かれたメロドラマ的な物語「六と二分の十一」(1927)や、「LA GLACE A TROIS FACES(三面鏡)」を監督している。「三面鏡」は、ポール・モーランの短編の映画化であり、3人の女性と関係をした男が交通事故で死んでいくという内容だ。主人公たちを映さずに周囲の人々や情景を映すといった方法で、エプスタンは間接話法で描いているという。

 純粋映画「時の外何物もなし」(1926)を監督したアルベルト・カヴァルカンティは、「可愛いリリー」(1927)を監督している。気軽に暮らしていた娘が、男にだまされて、子供をはらまされ・・・という小唄を基にして作られた映画である。物語は次々と変わっていくが、映画のリズムは各節ごとに繰り返されている。

 「純粋映画」や自らが夢見ていた映画を作ろうとしたが実現できなかったジェルメーヌ・デュラックは、舞台の映画化である「アントワネット・サブリエ」(1927)を、パラマウント社のために演出している。

 ボリス・カウフマンは、「LES HALLES(巴里中央市場)」(1927)を監督している。夜半から盛況の暁、朝が来て人々が去り静寂が訪れるまでの巴里中央市場を、労働者側の立場から描いているという。