映画評「極楽新兵」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]WITH LOVE AND HISSES  [製作]ハル・ローチ・ステュディオズ  [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督]フレッド・ギオル  [製作・脚本]ハル・ローチ

[出演]スタン・ローレル、オリヴァー・ハーディ

 新兵として入隊したスタンと、教官のハーディ。ドジなスタンにハーディは振り回される。

 日本では極楽コンビとして知られたローレルとハーディが共演している。日本タイトルにも「極楽」とあるので勘違いされる人も多いと思うが(私もだったが)、「極楽新兵」は製作のハル・ローチが2人をコンビとしてきちんと組ませて製作された作品ではない。とはいえ、「極楽新兵」は面白い。

 チーズの匂いに悩まされる前半の練兵場までのやり取りは特に目新しさはなかったが、ローレルとハーディを含めた兵士たちが行進に出かけてからは勢いが増す。特に、湖で泳ぐために服が燃えてしまった兵士たちが、近くを通った女性たちにバレない様に映画の看板(セシル・B・デミル監督の1926作品「ヴォルガの船唄」)の登場人物たちの顔部分に首を突っ込み、やり過ごそうとするギャグ。兵士たちがそのまま走りだしてハチの巣を踏んでしまい、大量のハチと一緒に練兵場に戻っていき、大混乱を引き起こす。

 看板に顔を突っ込む必要など何も無いのだ。だが、その姿の面白さが、その後の大混乱の面白さを増幅している。必要性よりも面白さを優先させるというのは、コメディとして非常に正しい。

 「極楽新兵」が、ローレルとハーディの2人がメインになってからが面白いのは暗示的だ(それまでは練兵隊を指揮する上官も絡んでいる)。チャールズ・チャップリンのキャラクターを思わせるローレルは、チャップリンほどの個性は生み出せなかった。チャップリンの初期短編の巨漢悪役を思わせるハーディもそうだ。だが、2人が組めば、違った面白さを生み出せることに気づいたハル・ローチは偉い。