映画評「伯林-大都会交響楽」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]ドイツ  [原題]BERLIN: DIE SINFONIE DER GROSSTADT  [英語題]BERLIN SYMPHONY OF A GREAT CITY  [製作]Deutsche Vereins-Film、Les Productions Fox Europa

[監督・脚本]ワルター・ルットマン  [製作・脚本]カール・フロイント

 ドイツの首都であり、当時のヨーロッパが誇る大都市でもあったベルリンの1日を、ドキュメンタリー的に撮影した作品。1920年初頭に起こった「絶対映画」のムーブメントにおいて、「作品」(1921)といった短編を製作したルットマンが監督した作品である。

 ベルリンの1日の見学記というのが最もしっくりくるような気がする。決して観光地を回るわけでもなく、かといってベルリンの奥深くに入り込むわけでもない。道路で、職場で、公園で、交通機関で、レストランで起こることを、テンポ良い編集で見せてくれるのが「伯林」だ。隠し撮りをメインにした撮影と言われるが、その割合は決して多くない。許可をもらって撮影しなければ不可能なシーンは多々ある。加えて、女性が橋の上から川に身を投げるシーンは、入念な演出が行われている事がわかる。

 「伯林」は、あくまでも見学記である。だが、非常に心地よい見学記である。私が見たのは完全に無音のものだったが、音楽があればさらに心地よい見学記であったことだろう。心地良さ以上のものはないかもしれないが、映像の持つ可能性を広げてくれたことは確かだ。