「月世界旅行」

 ジョルジュ・メリエスはこの年、後世まで語り継がれることになる作品「月世界旅行」を撮影している。H・G・ウェルズジュール・ヴェルヌを混ぜ合わせ、夢幻劇の伝統的なスタイルを採用している。

 この作品は興行的に大成功を収めた。にも関わらず、海賊版が大量に出回ったために、メリエスの手元には成功に見合うだけの収入は入ってこなかった。特にアメリカではひどかったらしく、アメリカでの興行はまったくメリエスの収入とならなかったらしい。

 ただし、メリエスのこの作品はトリック映画や夢幻劇映画の魅力を、現実とは異なる創造力と物語が映像化されることの魅力を世界に広めたとは言えるかもしれない。企業人ではなく、芸術家として自らを規定していたメリエスらしいといえば、メリエスらしい。