イギリス セシル・ヘップワースの活躍

 イギリスでは、セシル・ヘップワースが製作した「ローヴァーに救われて」という映画がヒットを飛ばした。犬が誘拐された赤ん坊を見つけ出すというこの作品は、ショットを割って空間的な広がりを感じさせる作品だった。

 ヘップワース自身と妻と娘と飼い犬が出演し、ヘップワースの妻がシナリオを書いたという家族で製作されたとも言えるこの作品はあまりにも売れたために、ネガが使い物にならなくなって、撮り直しを2回したという話があるくらいのヒットだった。

 ヘップワースはこの年、追っかけ映画である「間違って罪を負わされて」や、貧しいイギリス人労働者階級の物語である「外国人の侵入」といった作品も製作している。

 このほかにもゴーモン・ブリティッシュ社による「あのひどく嫌な赤ん坊」や、ロバート・ウィリアム・ポールによるロシア革命に影響を受けた政治映画「無政府主義に駆り立てられて」といった作品などが製作されている。

 さらにイギリスでは、ウィリアム・ハガーによって「チャールズ・ピースの生涯」(1905)が製作されている。8分という上映時間は、当時としては長いものだった。泥棒をし、人妻に手を出そうとして見つかり、その夫を殺し、警官に追われて何人も殺し、ついに逮捕され、絞首刑になるというストーリーだ。実在の殺人犯を主人公としており、その後のイギリス映画の方向を予告しているとも言われる。走る汽車の上にカメラを乗せて撮影するという野心も見られる。また、ハガー自身が主人公に扮しているという。

 イギリスで後に栄えることになるドキュメンタリーの分野では、「陸軍の生活」シリーズが製作されている。