アリス・ギィ−世界最初の女性映画監督(1)

 ここで、ちょっとアリス・ギィについて触れたい。

 アリス・ギィの名前は映画史に燦然と輝いているわけではない。むしろ、多少映画史に詳しい人物でも知らない人は多くいるだろう。

 「アリス」は一般的に女性の名前であり、アリス・ギイは女性である。映画草創期にフランスの映画会社・ゴーモン社で演出を担当した女性である。しかも、一介の映画監督ではなく、ゴーモン社の映画製作部門の責任者を務めた女性だ。

 同時期の映画人で最も有名なのは、ジョルジュ・メリエスであろう。メリエスはトリック映画で人気を得た人物であり、「月世界旅行」(1902)という代表作は、映画史を作品で振り返るときには必ず登場するといってもいい。

 メリエスは同時に物語映画の始祖とも言われているが、これは微妙に違う。また、トリック映画の始祖とも言われているが、これも微妙に違う。メリエスは物語映画やトリック映画を高めたということはできるだろう。後世に影響を与えたともいえるだろう。しかし、「始祖」とは言えない。簡単な物語は、リュミエール社の初期の作品にも見られるし、トリック映画はエジソン社のキネトスコープの作品に見ることができる。