フィルム・ダール社と文芸作品−フランス(1)

 高尚な主題に取り組みことを目的として昨年設立されたフィルム・ダール社が、この年「ギーズ公の暗殺」という文芸作品を世に送り出している。

 モンタージュはなく、メリエスの映画と同じ舞台を撮影する方法で撮られた作品だったが、コメディ・フランセーズの役者たちが出演したというだけで話題を呼び、評判もよかった。

 それまで、映画に出演する役者の多くは、舞台の端役や仕事のない役者たちだった。喜劇映画や追っかけ映画では曲芸師たちが雇われていた。演出家たちが、酒場などであぶれた役者たちに声をかけて翌日から撮影といった感じで役者は出演していたのだった。

 コメディ・フランセーズの役者たちの演技は、抑制されており、それまでの大げさな身振りの演技にはない節度を持っていたといわれている。また、劇作家のアンリ・ラヴダンの書いた脚本も優れていたという。