MPPCと独立系の映画製作会社の対立(1)

 昨年、アメリカにおいて、エジソン社を中心に結成されたカルテルであるMPPC(モーション・ピクチャー・パテント・カンパニー)は、この年の1月1日より営業を開始している。MPPCの営業開始は、MPPCに反発する映画会社とMPPCとの対立の幕開けでもあった。

 ニッケルオデオンの所有者たちの中には、MPPCの決定(MPPCへの年賦金の支払い)を受け入れない人々がいた。彼らはアメリカ国外にニッケルオデオンで上映する映画を求めた。

 2月に、アメリカ国外の映画会社は、「国際映画上映・製作会社」を設立している。この会社には、イギリス、フランス、イタリア、ドイツの映画会社が参加した。機械はMPPCが保有する特許に抵触されないものが用意され、MPPCがイーストマン社と独占契約を結んでいたフィルムについてもリュミエール社(映画の父と言われるリュミエール兄弟の会社)より不燃性フィルムを入手できると発表した。

 だが、この会社にはフランスのゴーモン社やエクリプス社、イタリアのチネス社、デンマークのノーディスク社といった大手の会社は参加しなかった。これらの会社はMPPCへの加盟を模索していたのだ。さらに、MPPC側は圧力をかけ、国際映画上映・製作会社の製作した作品のアメリカへの輸入に際し、高い関税をかけることに成功したことなどもあり、国際映画上映・製作会社の試みは成功しなかった。このことは、MPPCに加盟しなかったアメリカのニッケルオデオンの所有者たちが、自ら映画を製作する必要性が高まる一因となった。



(映画本紹介)

アメリカ映画の文化史―映画がつくったアメリカ〈上〉 (講談社学術文庫)

アメリカ映画の文化史―映画がつくったアメリカ〈上〉 (講談社学術文庫)

アメリカ映画史を社会的、文化的、経済的な側面から眺めた1冊。といっても、それほど難しくはないので、専門的な映画本の入門編としても最適。MPPCの結成から崩壊までについても1節が割かれている。