ヨーロッパにおけるカルテルの挫折(2)

 ヨーロッパで模索されたカルテルCIDEFはすぐに挫折することになる。その理由は、いくつかある。「フィルムの4ヶ月間の貸し出し後に返還」という規定には、興行者やレンタル業者が反対した。興行者やレンタル業者にとっては、発売から数年たった作品でも「新作」と称して上映したり、使い古したフィルムを転売することができなくなるのだった。また、映画製作者側でも、自社でレンタル業を営めないような弱小の会社はこの規定に反対した。

 だが、CIDEFが挫折した最大の理由は、パテ社が自社で生フィルムの製作をすることを決定したためだった。当時、世界最大の映画製作会社であったパテ社にとっては、他社から生フィルムを購入するよりも、自社内で調達する方が有利であるという判断からであった。パテ社の決定はCIDEFの規定に違反するものであり、パテ社はCIDEFを離脱することになった。パテ社の離脱によって、最大のフィルム供給先を失ったイーストマン社もCIDEFから離脱を決定し、CIDEFの試みは失敗に終わることとなった。


(映画本紹介)

映画の先駆者たち―パテの時代〔1903-1909〕 (世界映画全史)

映画の先駆者たち―パテの時代〔1903-1909〕 (世界映画全史)

ジョルジュ・サドゥールの大著「世界映画全史」の中の1冊。映画誕生前夜から1929年までに12巻費やされたこの本は、現在の映画史ではこぼれがちな部分も知ることができる。ヨーロッパにおけるカルテル形成の動きもその1つ。