D・W・グリフィスの活躍(2)

 グリフィスは、カメラマンのビリー・ビッツァーと一緒に、人工照明の表現力豊かな利用法を研究した。「エドガー・アラン・ポー」「政治家の恋物語」「大酒飲みの回心」「ピッパが通る」(1909)では新鮮味のあるライティングを見せているという。例えば、朝日の効果を出すために太陽の正面から取ったり、炉火の明りで撮影したり、太陽光が逆光で人物に当たり、影が手前に延びるシーンを撮ったりした。カメラマンは反対したが、グリフィスは押し通したという。

 また、役者が白いテーブルクロスに反射した光で顔がよく見えるのを見て、白い反射板を使ったとも言われている。会社(バイオグラフ)側は役者の顔が翳ると反対したが、バイオグラフの重役のジェレマイア・J・ケネディが「まるで版画みたいだ」とグリフィスの方法を支持したという。

 「ピッパが通る」(1909)では、セットの壁にスライドパネルを組み込み、パネルの向こうに強力なライトを置き、ピッパが寝ていると、パネルをスライドさせ朝の光が差し込み、完全にスライドさせると部屋には燦燦と光が差し込んでいるという朝日の昇るさまを人工的に創り出している。

 ただ、これらの人工照明の利用法が世界で最初かどうかはわからない。


(映画本紹介)

リリアン・ギッシュ自伝―映画とグリフィスと私 (リュミエール叢書)

リリアン・ギッシュ自伝―映画とグリフィスと私 (リュミエール叢書)

D・W・グリフィスの主演女優としても有名なサイレント映画を代表する女優の一人であるリリアン・ギッシュの自伝。グリフィスについての記述がかなり多く、グリフィスを知る上で非常に役に立つ1冊。